糖尿病
糖尿病とは?
糖尿病は血液中にブドウ糖が余分にある状態が長く続いてしまう病気で、多くの場合、食生活や運動不足、肥満などに起因します。
糖尿病の2つのタイプ
思春期に発症し自己免疫が関与する1型糖尿病、遺伝因子に過食や運動不足が関与する2型糖尿病です。1型は特殊で、ほとんどは2型ですが、この1型糖尿病にかかる方も最近は増えています。
糖尿病の症状
糖尿病の3大合併症
- 神経障害
3大合併症でまず最初に出現しやすい。末梢神経が障害されて、手足の先のしびれなどが起こります。 - 網膜症
網膜の細い血管に障害が起こって視力が低下していきます。失明原因の第1位となっています。 - 腎症
糖尿病患者さんの30〜50%に発症するとされており、透析導入の原因の第1位で40%を占めています。
糖尿病の検査
糖尿病は血糖値のみならず、合併症の有無の評価も非常に重要です。
- 血液検査/尿検査
HbA1Cや血糖値の他、脂質異常症や腎機能障害の合併がないかどうかも評価します。 - 心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査
心臓疾患の合併がないかどうか調べます。糖尿病と心疾患には非常に関連があります。 - 頸動脈超音波検査
頚動脈の狭窄がないかどうか、動脈硬化の進展具合を調べます。 - 血圧脈波検査
血管の硬さや血管の詰まりを調べる検査で、動脈硬化の進展具合がわかります。
血管年齢も測定できます。両手足の血圧を測定する簡単な検査です。 - 眼底検査
合併症の一つである網膜症の有無を評価します。眼科へは定期的な受診をおすすめいたします。
糖尿病では比較的早期の段階から動脈硬化が進んでいくという報告もありますので、予防はもちろんですが早期発見・早期治療が大切になります。
糖尿病の薬物療法
① 糖吸収・排泄調節薬
(1)αグルコシダーゼ阻害薬
・アカルボース(グルコバイ)
・ボグリボース(ベイスン)
・ミグリトール(セイブル)
【作用機序】
・αグルコシダーゼの作用を阻害し、糖の吸収を遅らせ食後の高血糖を抑制します。
・血糖コントロール改善に際して体重増加がしにくいと言われています。
・低血糖の可能性は低いです。
【副作用】
・腹部膨満感、放屁の増加、下痢などの副作用があります。
(2)SGLT2阻害薬
・イプラグリフロジン(スーグラ)
・ダパグリフロジン(フォシーガ)
・リセオグリフロジン(ルセフィ)
・トホグリフロジン(アプルウェイデベルザ)
・カナグリフロジン(カナグル)
・エンパグリフロジン(ジャディアンス)
【作用機序】
・近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮します。
・体重低下が期待されます。
・単独での使用は低血糖の可能性は低いです。
【副作用】
・尿路感染症の可能性
・脱水
② インスリン抵抗性改善薬
(1)ビグアナイド薬
・メトホルミン塩酸塩(メトホルミンTE、メトグルコ)
【作用機序】
・肝臓での糖新生の抑制が主であるが、消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善など
・体重は増加しません。
・単独使用では低血糖をきたす可能性は極めて低いです。
・がんの発症率を抑えることが多くの研究で明らかになっています。
【副作用など】
・重篤な副作用として乳酸アシドーシスがある。肝・腎・心・肺機能に問題のある患者、循環障害、脱水などがある患者には慎重な投与が必要です。
・造影剤を使用する場合には前後で投与中止が必要です。
(2)チアゾリジン薬
・ピオグリダゾン塩酸塩(アクトス)
【作用機序】
・インスリン抵抗性を改善して血糖降下作用を発揮します。
【副作用など】
・水分貯留傾向となるため、浮腫や心不全に注意が必要です。
・海外の研究で膀胱癌のリスクを若干高めたと報告されています。
③ インスリン分泌促進薬
(1)スルホニル尿素(SU)薬
・グリメピリド(アマリール)
【作用機序】
・膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進し、短時間で血糖を低下させます。
【副作用など】
・症例によっては少量でも低血糖を起こすことがあります。
・食事時間が遅れたときに低血糖が出現する可能性があります。高齢者では注意が必要です。
・腎・肝障害のある患者及び高齢者は、遅延性低血糖をきたすリスクがあるので注意を要します。
(2)速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
・ナテグリニド(スターシス、ファスティック)
・ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト)
・レパグリニド(シュアポスト)
【作用機序】
・膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進し、服用後短時間で血糖降下作用を発揮します。
・SU薬に比べて吸収と血中からの消失が早いです。
・食後高血糖に効果的です。
【副作用など】
・低血糖を起こす可能性があります。
・肝機能・腎機能障害の患者では低血糖が遷延することがあります。
(3)DPP-4阻害薬
・シタグリプチンリン(グラクティブ、ジャヌビア)
・ビルダグリプチン(エクア)
・アログリプチン(ネシーナ)
・リナグリプチン(トラゼンタ)
・テネリグリプチン(テネリア)
・アナグリプチン(スイニー)
・サキサグリプチン(オングリザ)
・トレラグリプチン(ザファテック)
・オマリグリプチン(マリゼブ)
【作用機序】
・DPP-4選択的阻害により活性型GLP-1濃度および活性型GIP濃度を高め、血糖降下作用を発揮します。
・体重は増加しません。
・単独使用では低血糖はほぼありません。
【副作用など】
・食前食後どちらでも内服可能です。
・肝機能・腎機能障害の患者では低血糖が遷延することがあります。
・腸閉塞を発症する可能性があります。
糖尿病のインスリン療法
(1)超速効型
・ヒューマログ(インスリンリスプロ)
・ノボラピッド(インスリンアスパルト)
・アピドラ(インスリングルリジン)
(2)持効型
・ランタス(インスリングラルギン)
・トレシーバ(インスリンデグルデク)
・レベミル(インスリンデテミル)
その他、バイオシミラー医薬品があります。
(3)中間型
・ノボリンR(生合成ヒト中性インスリン)
・ヒューマリンN(ヒトイソフェンインスリン)
(4)混合型
・ノボラピッド30/50/70ミックス(二相性プロタミン結晶性インスリンアスパルト)
・ヒューマログミックス25/50(インスリンリスプロ混合製剤)
・ライゾデグ配合(インスリンデグルデク/インスリンアスパルト)
など
当クリニックでは患者さまの病態に応じてこれらの薬剤の中から最適な治療薬・注射をご提案いたします。インスリンが必要になった場合も、基本的には入院せずに、外来でインスリン導入することができます。